ベイビーガール
昨今ハリウッドでは、女優自身が映画のプロデューサーを務める傾向があります。
エマ・ストーンは「哀れなるものたち」、マーゴット・ロビーが「バービー」、シドニー・スウィーニーが「恋するプリテンダー」と、プロデューサーに名を連ねることで資金を集めたり内容を指揮し、有望な女性クリエイターを起用できるなど、ハリウッド映画業界がそれまでなかった形でフェミニズムを表現してきていることがうかがえます。
またその中でも、熟女が年下の男性と恋愛する映画や、女優自身がヌードを披露する映画も少しずつ増えているとのこと。
それまで男性優位だった業界で女性主体の内容を描いた作品が増えていることは、まさにフェミニズムな部分であり、今後もますます「女性のリアル」が描かれた作品が増えることでしょう。
今回鑑賞する映画、実は官能映画を予感させる1作。
なんでも地位も名誉も手に入れた女性CEOが、インターンの男性によって欲望を探求してくというもの。
早速鑑賞してまいりました!!
作品情報
新進映画スタジオ「A24」が放つエロティックエンターテインメントを、本作でヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞したニコール・キッドマン主演で描く。
すべてを手に入れたはずの女性CEOが、満たされない欲望をインターンの青年に暴かれていくことで、「昼はCEO、夜は犬」と化していく姿を、官能的かつスリリングに描いたエロティックスリラー。
監督は、ポール・ヴァーホーヴェン監督の「ブラックブック」など女優として多数出演経験のあるハリナ・ライン。
前作「ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ」とは違い単独で脚本を執筆したところ、主演を務めるニコール・キッドマンの目に留まり、キッドマンプロデュースの下製作が実現となった。
主演の女性CEOロミーを演じるのは、「LION/25年目のただいま」、「聖なる鹿殺し」のニコール・キッドマン。
女優としての美しさを保ちながら数々の映画賞を受賞してきた彼女は、「役者として、人として、すべてをさらけ出した」と告白する圧巻の演技を披露し、ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞を獲得した。
そしてそんなCEOを誘惑するサミュエル役に、「キングスマン:ファーストエージェント」、「ザリガニの鳴くところ」、「逆転のトライアングル」のハリス・ディキンソン、彼に妻を寝取られてしまう夫ジェイコブ役を、「ペインアンドグローリー」、「アンチャーテッド」のアントニオ・バンテラスが演じる。
最高の挑発的と評された本作。
主人公は年下の男との刺激的な賭けひきによって、何を見出してくのか。
あらすじ
NYでCEOとして、大成功を収めるロミー(ニコール・キッドマン)。
舞台演出家の優しい夫ジェイコブ(アントニオ・バンテラス)と子供たちと、誰もが憧れる暮らしを送っていた。
ある時、ロミーは一人のインターンから目が離せなくなる。
彼の名はサミュエル(ハリス・ディキンソン)。
ロミーの中に眠る欲望を見抜き、きわどい挑発を仕掛けてくるのだ。
行き過ぎた駆け引きをやめさせるためにサミュエルに会いに行くが、逆に主導権を握られてしまい… (HPより抜粋)
感想
#映画ベイビーガール 観賞。どんどん鎧を脱がされていくニコールキッドマン、彼女を飼い慣らすハリスディキンソン。只々可哀想なアントニオバンテラス。でも原因はあんたにある。
— モンキー🐵@「モンキー的映画のススメ」の人 (@monkey1119) March 28, 2025
どうしてドMだと見抜けたのか俺にはさっぱりわからんし、ロミーの行動心理もさっぱりわからん。 pic.twitter.com/6CYz8fEHD4
野心と道徳はまるで違う。欲望に従うのは道徳心じゃないってか。
ロミーもサミュエルも行動心理がよくわからん。
久々にハズレのA24映画。
以下、ネタバレします。
案外物語は薄い。
女性が目指したい地位にいるロミーが、インターンの身分であるサミュエルに徐々に着飾った鎧を剥がされ、従順な雌犬と化していく権力逆転エロティックゲーム。
冒頭からいきなりロミー演じるキッドマンが騎乗位でお出迎えしたかと思ったら、旦那とのエッチに満足いかなくてひとりポルノ動画を見ながら奥歯噛みしめて一人エッチを始めるというトンデモないオープニング。
要は自分の奥底に眠るマゾっ気、いや変態願望を隠したまま、旦那にも打ち明けられず悶々と歳を重ねてきたのがロミーってわけ。
しかもイェール大学卒業後に様々な試験を受け、最終試験の難しさに頭が着てファックといったら採用されるという、途轍もなく野心溢れる女性ロミー。
現在はアマゾンのような巨大物流システム=ロボットの自動化を導入して企業として更なる飛躍を遂げようとしている一流企業のCEOでもあると。
このように人前では、社長として、主婦として、そして母親として、他者から見られる立場故に着飾っていたけれど、一人の男に全てを見透かされて、彼とのパワーゲームを繰り広げながらついに本性を晒してしまう=敗北を喫するという流れなのであります。
そこからはというものの、勝手に理由付けてロミーの家にやってくるという一体どういうつもりで訪れたのか全く理解できないサミュエルの行動によって、ロミーは動揺を隠しきれず困惑するも、彼と「飼い主と犬」の契約を結んで、夜な夜なホテルやオフィスでイチャイチャしまくる光景が幾度となく描かれていく。
もちろんそんな情事などすぐさま誰かに覗かれたり勘付かれたりするわけで、他者からの「地位ある女性モデルとしての品格」を指摘され、破滅寸前まで追い込まれていくというお話。
ひたすらEDMが流れたと思ったら絶頂を迎えるロミーとサミュエルの情事ではジョージ・マイケルが流れたりと、雰囲気だけは一丁前な映画でしたけど、どうも俺としてはノットフォーミーな映画でしかなかったです。
何でこれを見ようと思ったかって、一応ゴールデン・グローブ賞にノミネートするほどニコール・キッドマンの芝居が評判良いってことで見に行ったわけですよ。
見終わって思ったけど、確かに下着脱げとか股開けとか服を脱げとか言われて辱めを受けながらも興奮を隠しきれない演技を、57歳の女優がやる、しかも自身がプロデューサーになって演じるって中々すごいこと。
凄すぎて私生活でも性生活に不満があるんじゃないかと疑ってしまうくらいニコール・キッドマンが全力で喘いで感じて絶頂するんですからそりゃすごい。
しかも終盤ではそんな自分を旦那の前でさらけ出すことができずにいたことに対する苦悩を涙ながらに白状するシーンはお見事でしたよ。
とはいえ映画全体の感想で言えば、一体どうしてサミュエルがロミーの本性を見抜けたのかさっぱりわからないし、あれだけ虚勢を張ってCEOとして然るべき態度でサミュエルに接していたのに、どうして我慢できなかったんでしょうかね。
そんなにサミュエルの蔑んだ目に興奮を隠せなかったんですかね。
しかしサミュエルもサミュエルですよ、他所の犬を平気で躾けられる、というかコントロールできるってブリーダーでも難しそうなことを瞬時にやってのけてしまう存在って貴重すぎやしねえかと。
終いにはロミーだけでなくロミーの旦那まで落ち着かせるほどの能力ですよ?
人心掌握術でも持ち合わせてんじゃないかって思ってしまいましたよ。
なんなら東京のカワサキなんかに就職せずにセラピストでもやった方が将来安泰じゃないって思っちまいましたよ。
しかしこの手画の映画を見ると色々女性って役割が多すぎて辛いよなって思えて仕方ありません。
男のてめえが全て押し付けるからこうなってんだよって怒られるかもですけど、女であり妻であり母であり、加えて企業のトップなわけですよ。
一体いくつ顔を持ってなきゃいけないんだって話じゃないですか。
一応これ見て浮かんだのが成田悠輔がいつだったか「セックスと愛情と親心をぜんぶ家族の中に収めるのは荷が重すぎませんか」って話なんですよ。
結婚して家庭を作っていくうえで、一番大事なのは子供を育てることだと思うんですけど、それ以外に様々な役割を相手に求めてしまうのが上手く行かないことなのではってことだと思うんですね。
彼の場合、それぞれ担当の役割を持つ相手を見つければ問題なく家族でいられるっていう中々の極論をほざいてるんで、簡単には受け入れられない提案で、相変わらずこの人はって思ってたんですね。
でも、本作においてロミーは、正にこの案件に当てはまる人なんじゃないかと。
順風満帆だけど一つだけ物足りないことがセックスだと。
それを相手に求めても満足できないでいる、悶々としている、その悶々を解消してくれる存在と出会ってしまった、でも彼は自分の会社に研修生としてやってきている。
倫理がモラルが体裁がと建前という名の鎧によって平静を保っていたけれど、相手は一回りも二回りも上手の能力者で、結局彼の前ではベイビーガールでしかいられない。
成田さんの提案通りに従うのであれば、ロミーの旦那がこの関係を認めれば色々ややこしくならないんじゃないのかと。
でも、この提案では彼女は報われないのが本作のめんどくさいところ。
それは会社の社長であるってことなんですよね~。
彼女のアシスタントの女性が、終始自分の昇格を相談したい姿を見せるんだけど、ロミーはいつも後回しにしている。
結局アシスタントは、サミュエルとの関係を知っていることを告げ、それをネタに揺さぶるかと思いきや「彼と別れてほしい」とお願いするんですね。
賭け引きとかじゃなく権力者として権力者らしい存在を押し付けていたんですよね。
もちろん人の上に立つこと、人よりも目立つ存在であること、そうした誰かに見られている、その場に立たせてもらっているような存在が、女より妻より母親よりも一番重い鎧を着させれらてるんじゃないかって思ったんですよね。
その鎧を着ている以上、本作における上で性癖含めた本性を晒すことや知られるということは社会的抹殺を意味すると。
そうした要素を含んだ映画なのに、なぜかあんまり面白くないのはどういうことなんだろうと、勢いで書きながら悩んでおりますw
単純にロミーとサミュエルの関係に納得がいってないんですよ。
サミュエルはロミーほどの年齢でも性の対象として良く平気でいられるなと。
下手したら親子の差もある年齢ですよ。
しかも相手はもうすぐ還暦を迎える年齢ですよ。
恋に歳の差なんてって話じゃないですからねコレ。
体の関係の話ですからね?
劇中でサミュエルはロミーに対して、別の恋人がいるからロミーのことを思えるとか言ってたんですよ。
自分にとってその人には別の役割があって、ロミーにはロミーで別の役割がある。だから対等に愛することができるみたいな。
要は成田方式の話ですよね。
だったらさ、サミュエルの恋人を登場させた方が良いんじゃないかって思ったわけですよ。
それこそロミーのアシスタントでもいい。ちゃんと彼の恋人を登場させることでロミーの心がいろいろ揺らぐ描写があっても良いのかと。
ロミーには旦那がいてサミュエルには相手がいないって、なんかあの契約においてフェアじゃないというか。
傍から見たらただの不倫ですし、それじゃ面白くないっていうか。
あとは、サミュエルには他にもそういう契約で飼い慣らしてる女性がいるとかね。
最後旦那にバレてしまったことが原因で関係を解消してしまったわけで、ロミーは旦那の腕に抱かれながら彼を思い出すという描写で幕を閉じたわけですけど、一方のサミュエルはどうなったんだと。
ぶっちゃけ反省せずにまた別の相手、それこそカワサキの女性重役でもいいや、同じことを繰り返してるって所を見せたら、彼を悪者のように見せらるし、ロミーは結局コントロールされてただけみたいになれたのになぁと。
もちろん洗脳は解けてないみたいな解釈で終わらせる前提ですけど。
最後に
結局もっと一悶着を入れてほしいという話ですよ、不満としては。
サミュエルに対しての抵抗が長い、家族の前に現れても同じことの繰り返しでしかなく、さっさとッ従順な雌犬になって情事を繰り返し、行動がエスカレートすることで色々ややこしいことになって、建前としての役割と本能がロミーの中でせめぎ合っていくみたいな話にすれば面白かったのになあと。
サミュエルの言い分とか要らんのですよ。
ただのドSでいてほしかったなぁ。
立場?知らねえよ、四つん這いになれ。
家族の前に現れるな?しらねえよ、ミルク飲め。
同僚とじゃれ合うな?知らねえよ、クッキー食え。
ホテル来いよ、子供?知らねえよ、服脱げ。みたいなw
色々と物語の本質を読めてないかもですけど、ちょっと求めていたのと違った話でしたかね。
しかしハリス・ディキンソンのあのSっ気満載の目は最高でしたね。
そしてアントニオ・バンテラスは可哀想でしかない。
でもあなたがちゃんと性生活でも妻を満足にしてたら、こんなことにはならなかったんですよw
難しいですけどねw
年上の男性と二回り以上下の女生徒の不倫よりも、こうした熟女と若い男性の物語のほうがウケが良いんですかねえ、今は。
どっちもあって良いと思うんですけどね。ぶっちゃけフィクションだし。
不謹慎だとか不健全だとか、いちいち映画に突っ込むのは野暮ですよね。
というわけで以上!あざっしたっ!!
満足度☆☆☆☆☆★★★★★5/10