
暗数殺人(ネタバレ)
テーマ:新作映画(2020)
原題:암수살인(英題:Dark Figure of Crime)
2019/韓国 上映時間110分
監督・脚本:キム・テギュン
制作総指揮・脚本:クァク・キョンテク
撮影:ファン・ギソク
編集:キム・ソンミン
音楽:モク・ヨンジン
出演:キム・ユンソク、チュ・ジフン、チン・ソンギュ、チョン・ジョンジュン、ホ・ジン、チュ・ジンモ、コ・チャンソク
パンフレット:★★★(700円/岡本敦史さんの実際の事件の情報にも触れたレビューがありがたい!)
(あらすじ)
恋人を殺害して逮捕されたカン・テオから「全部で7人殺した」という突然の告白を受けた刑事キム・ヒョンミン。しかし、テオの証言以外に証拠はなく、警察内部でもテオの言うことを信じる者はいない。それでも、テオの言葉が真実であると直感的に確信したヒョンミンは、上層部の反対を押し切り捜査を進めていく。やがて、テオの証言通りに白骨化した遺体が発見されるが、その途端、テオは「死体を運んだだけ」と証言を覆す。(以上、映画.comより)
予告編はこんな感じ↓
80点
「殺人の追憶」とか、未解決殺人事件を扱った韓国映画は大体面白いイメージがあるし、なんと「韓国で興行収入第1位」になった作品ということで、非常に観る気マンマンでしてね(微笑)。6月12日(金)、コロナ禍が収まって、やっと営業を再開したユナイテッド・シネマ豊洲にて、会員サービスデー割引を利用して「his」とハシゴ鑑賞いたしました。「こんな男が存在するのか!!! (°д°;)」と思ったり。
当日のgif。4番スクリーン、観客は7人でしたよ。
鑑賞後の僕の気持ちを代弁するビスケット・オリバを貼っておきますね(「刃牙道」より)。
「デジタル大辞林」によると、「暗数」とは「『旅とコーヒー』がコンセプトの世田谷にある自家焙煎カフェ」のことではなく(不要なボケ)。「実際の数量と統計上あつかわれる数量との差。主に犯罪統計において、警察などの公的機関が認知している犯罪の件数と実社会で起きている件数との差を指す」とのこと。本作のあらすじを雑かつ適当に書いておくと、ある日、刑事キム・ヒョンミン(キム・ユンソク)は、たまたま知り合った殺人犯のカン・テオ(チュ・ジフン)に呼び出されると「全部で7人殺した ( ̄ー ̄) ニヤッ」と告白されまして。ヒョンミンは金や物をせびられながらも、証言を元に地道に捜査した結果、白骨化した遺体を発見したりするんですが、しかし。いざとなるとテオは「オレは死体を運んだだけですYO!(`∀´) ケケッ」「お前が捏造したんだろ!( ゚д゚)、ペッ」と証言をスムースに覆してくるので、チュ・ジフンの絶妙な「厭な奴」演技も相まって、良い意味でかなりイライラさせられるのです (´Д`;) ンモウ!
テオの証言を元に死体を発掘したので、問いつめてみると…。
なんとこんなことを言い出すから、スゲー面倒くさいというね。
で、かつて犯人の自白に振り回されてキャリアを棒に振った元刑事のソン・ギョンス(チュ・ジンモ)に話を聞いてみたら、この手の犯罪者は「中途半端に自白する→捜査&起訴させる→証言を覆して無罪判決を勝ち取る→警察の横暴をアピール→『最初に逮捕された事件も無罪なのでは… ( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )』と世間に思わせて再審させる」というのが狙いとのこと。周囲からは「こんな奴、相手にしない方が…」と言われるも、「被害者と遺族のために絶対解決する!Σ(°д° ) クワッ!」と静かに情熱を燃やすヒョンソンは、いろいろあって白骨化した遺体がテオの元カノだということを証明。テオは再逮捕されて無期懲役になっちゃったので、今度は「あえての死刑狙い」で情報を流すようになり、ヒョンソンは行方不明の女性の捜査を続行するムードで映画は終了。「ヒョンソンのモデルになった刑事は今も捜査を続けていて、テオのモデルになった殺人犯は自殺した」といった内容のテロップが出て、映画は終わってたんじゃないかしらん。
最後は「被害者が消息を絶ったと思われる場所」にヒョンソンが立ち尽くしてましたよ。
2012年に放送された韓国のテレビ番組「それが知りたい」で取り上げられた「実際にあった事件」をモチーフに作られたという本作、「被害者遺族による上映禁止仮処分申請」や「別の被害者遺族による応援コメント発表」などを経て、韓国では2018年に公開されたそうですが、スゴい実話ですな。「受刑者が余罪を告白する」という話はあるものの(「凶悪」とか)、「受刑者がそれを利用して『逮捕された事件』を再審させようとする」ってのは、不謹慎ながらも「新しい」んじゃないかと。正直、現実的にはそれほど上手くいく気はしない手口というか、テオのキャラクターについてはかなり脚色されているんでしょうけど(実際の犯人の人物像は知りませんが「自己顕示欲が強くて小狡い」程度なのでは)、少し「小野悦男のケース」とかも連想したし、「なくはない」と思わせる説得力があった気がします。
もうね、「ムカつく犯罪者モノ」として超面白いんですよ。チュ・ジフンの飄飄とした演技が絶品であり、テオが証言を覆したり、小声でバカにしてきたりするたびに、ヒョンソンと一緒に観客も「ぐぬぬぬ… (`Δ´;)」とストレスゲージがドンドン溜まっていくのです。テオの罠の張り方も良くて、映画中盤、「ヒョンソンがそれとなく渡していた金」を利用して「アンタが買収したんじゃないか!」とか言い出すくだりは、怒りのあまりに脳が沸騰して幼少時の記憶を失ったほど(そういえば僕はどこで育ったんだっけ?)。回想として描かれる「女性への殺人描写」も最悪で(褒めてます)、ほとばしるほど憎いクズ野郎なだけに、クライマックスでヒョンソンがテオの「過去の犯罪」を証明して勝利した時は、超スッキりす (・∀・) ザマァ! もちろんキム・ユンソクの存在感も相変わらず見事だったし、「エクストリーム・ジョブ」にも出ていたチン・ソンギュの「気の良い若手刑事」演技も可愛かったけど、僕的に本作はチュ・ジフンの評価がガン上がりだった次第。
ああん、チュ・ジフンったらこんな超憎々しい顔をして舐めた口を叩くから…。
観客はキム・ユンソクとシンクロ率400%であり、危うくゼルエルを捕食するところだったというね… (´・ω・`) ナニガナニヤラ
ただ、最後にテロップで明かされる「未解決のケースも残っている」という事実はヘビーだし、モデルになった刑事が今も捜査しているってのは「こんな男が存在するのか!!! (°д°;)」とマジで感心したし、被害者とその遺族のためにすべてを犠牲にして活動するその姿勢は素晴らしいとしか言いようがないと思ったんですけれども(実際に被害者遺族が感謝しまくっているワケだし)。でも、47歳のオッサン的には「それって一人の刑事に背負わせて良いものなの?」と感じたりもしたというか。そもそも劇中で問題になったように「刑事が受刑者に自腹で金を払って情報を得る」のだってアウトだったと思うし…。教師とか医者にも言えることなんですが、結局は「職業」なのだから、こんな個人の活躍を美談にして「大変でしたな」で終わりにするのではなくて、組織的な改善点を考えるべきでは…な〜んて思うものの、ふふふ、なんとなく知恵熱が出てきたのでね、後は頭の良い方々にお任せするとしますかな。「あの鐘を鳴らすのはあなた」、なのかもしれませんーー(他人に丸投げの割には偉そうな文章)。
ということで聴いてください、和田アキ子さんで「あの鐘を鳴らすのはあなた」↓
ううむ、例によってよくわからない駄文を垂れ流しちゃいましたが(汗)、何はともあれ、実に面白い実録犯罪ムービーでしたヨ (°∀°)b ヨカッタ! まだ上映中なので、この手の韓国犯罪映画が好きな人はぜひ劇場に足を運んでみてくださいな。
デジタル盤のサントラがありました。

パンフで岡本敦史さんが「姉妹編」とオススメしていたキム・ユンソク主演×クァク・キョンテク監督作。観たい!
韓国産の実録犯罪ムービーといえば、本作が白眉ですな。ドロップキック描写が大好き。